芽吹く前のさくらのように
毎朝の通り道、さくらの樹が出迎えてくれるのですが、今頃のさくらが、一年で私はいちばん好きです。
一見、花が咲いていないように見えるので、なんとも面白くないと思われるかもしれませんが、
よく観察してみると、今頃のさくらは、根っこに力が集まってきて、それが枝葉と蕾に伝わってゆくのが感じられ、ほんとうにパワフルです。
さくらの樹は毎年、花を咲かせているので、花を咲かせるのが当たり前のように、見過ごされてしまいますが、これが人間のする初めてのこととなると、そうはいきません。
花が咲くだろうか、と不安になってしまいます。
そして、今このとき、不安を感じてみてはじめて、日々することはみな未知のことで、不安や恐れがあって、こころが動くのは自然だ、ということにも気づかされます。
おそれるべきは、恐れがあることより、恐れに気づかないで無意識のうちに、恐れの声に振り回されてしまうことです。
この街に根をはったなら、芽吹く前のさくらのように、静けさの中に動いていようと思いました。